Israel Japan | Business Guide | 2018
023 日本人とイスラエル人、どうすればビジネス文化と 行動の違いを克服できるのか? ソフィーヤ・グゲレブ(ベレザンスキ) 長 い歴史を持つ、イスラエルと日本の文化。こ の2つの文化のつながりは興味深く、このとこ ろますます結びつきが強くなっています。日 本の人々のイスラエル訪問に対する関心は高まりを見 せ、実際に訪れた人は、信じられないほどさまざまな種 類の人や味や色が混ざり合う様子に心を奪われます。 日本人は同じ土地に2,000年以上も暮らしていますが、 イスラエルでは、民族離散ディアスポラによる2,000年 の流浪の旅から人々が戻ってくると、「ちゃんこ鍋」のよ うにさまざまな民族の混じり合う状態が生じました。 そのため、イスラエルのビジネスマナーは日本とはと ても対照的です。 イスラエル人は表情やジェスチャーがいきいきとしてい るのが特徴です。日常会話でも相手に近づいて話し、そ の話し方も騒がしいので、イスラエルに到着したばかり の日本人は思わず怖気づいてしまうかもしれません。 ビジネスの意思決定場面でのイスラエル人は、話し声を 大きくしたり、顔を目の前まで近づけたりしてもまだ足り ないとでも言うように、とにかくせっかちで、即断を信条 としています。そのビジネススタイルを見れば、きっと圧 倒されることでしょう。たとえば、会議中に割って入る、 熱く語るといったようなカジュアルな行動や、比較的規 模の小さな企業では厳しい上下関係がないために、出 会ってすぐにスキンシップを交えたコミュニケーション を取っても自然な態度だと見なされます。また、そうし た習慣のおかげで話し合いがスピーディに進み、アイ デアもすぐに昇華できます。 Sophiya Gugelev (Berezansky) is a Japan Specialist who holds a Master’s Degree in East Asian Studies from the University of Haifa.She is the General Manager of the Israel-Japan Friendship Society and Chamber of Commerce.She is a Calligraphy and Suiboku ga specialist and artist. ビジネスパーティでは、ドレスコードがカ ジュアルであれば、イスラエル人が得意 とする、気取りのない本音をぶつけあう 意見交換が始まります。当然、ビジネス会 議でもプライベートな質問が絶えることが ありません。日本人にはショックかもしれ ませんが、将来の同僚について何もかも 知りたいと思うイスラエル人にとって、こ うした行動はパートナーシップのための 極めて重要なステップとして考えられて います。その一方で、商売に関していえ ば、イスラエル人は、信念を曲げない手 ごわいセールスパーソンとしても、「強引な売り込み」 を得意とすることでも有名です。 より質が高く斬新な製品やソリューションを見つけ出し たいという熱い思いを育むのは、起業家精神に溢れた イスラエルの環境にあります。それは、イスラエル人に とってのビジネスの期限とは、ビジネスのスピードに依 存するものであり、柔軟に変化するものだという考え(こ れは、厳しく管理された環境でビジネスを行ってきた人 たちには由々しき事態)にも関係しています。言い方を 変えると、日本でよく見られるように、同じタイプの製品 を長期間提供し続ける行為は、イスラエルでは弊害とし て見なされる場合もあるということです。 しっかりと決められた役割や規則を尊重する、比較的 均質な社会にいた日本人がイスラエルに到着すると、 単に多様なだけでなく、相対立するものが幅広く混在 する文化に出会うことになります。このような極端な文 化の違いは、足元が崩れ落ちるような、衝撃的な体験に 違いありません――何しろイスラエルと日本は、文化と 行動の尺度で、全く正反対の位置にあるのですから。 ソフィーヤ・グゲレブ(ベレザンスキ)は日本の専門家。ハイ ファ大学東アジア学科で修士号を取得。現在はイスラエル 日本友好協会・商工会議所事務局長。書道、水墨画の専門 家であり、自身も嗜む芸術家。 「スシ」が「フムス」 に出会うとき しかしながら、相反する者同士だからこそ惹かれ合う 場合があるのも事実。違いがあればあるほど、お互い を理解したいという思いは強くなり、理解力も高くなり ます。日本人がイスラエルで称賛されているのは、まさ にイスラエル人に欠けているであろう性質なのです。 つまり、「冷静さ」、「落ち着いたボディランゲージ」、「相 手のプライバシーや個人の空間を尊重する」、「不確か さやリスクよりも安定を重視する」、「無駄のない言葉遣 い」です。さらに日本人は、その優れた管理スキル(特に 大規模な組織において)や根気強さ、長期にわたる事業 計画の遂行、イスラエル文化に対する飽くなき好奇心が 高く評価されています。一方、国際的な場面や世界各国 とのつながりの中で発揮されるイスラエル人の気楽さ が、日本のビジネスにとっては大きな魅力であり、大き な助けにもなります。 日本人にとってイスラエル訪問は楽ではありませんが、 イスラエルを去るのはさらに大変です。帰国しても、イス ラエルに芽生えた里ごころはいつまでも消えることがな く、再び戻りたいという思いが募ります。ですから、大い に困難はありますが、お互いに対する敬意が、相互の魅 力や相手から学びたいという願いと相まって、二国間関 係の揺るぎない基盤を形作っています。この関係は必ず や今後何年にもわたり続くでしょう。 *「ちゃんこ鍋」 力士の伝統的な食べ物。決まったレシピ があるわけではなく、料理できるものなら何でも鍋に入れ ることが可能。基本的に、果物以外(絶対ではない)、肉、 魚、豆腐、野菜などほとんどどの食品でもさまざまなタイプ のものが材料になる。 1962~1963年 1962年、イスラエルの外務 大臣ゴルダ・メイアが東京を訪問。1963年7 月、両国の公使館が大使館昇格。 歴史的な瞬間
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