Israel Japan | Business Guide | 2023

好調なイスラエル のフィンテック デジタルバンキングアプリか ら暗号通貨取引プラットフォー ム、決済システムから投資情 報、融資から保険まで、イスラ エルのフィンテック産業は世界 の金融革命の最前線に立って います。 | シュムエル・ベン・トヴィム フ ィンテック（金融テクノロジー）は、個人や企業の財務や金融取引の あり方に大きな変革をもたらしました。近年、イスラエルはフィンテッ ク・イノベーションにおける世界有数の先進国として頭角を現しています。デ ジタルバンキングアプリから暗号通貨取引プラットフォーム、決済システム から投資情報、融資から保険まで、イスラエルのフィンテック産業は世界の 金融革命の最前線に立っています。  イスラエルには、豊富な高学歴人材、堅牢なベンチャーキャピタルエコシス テム、関連技術（サイバーセキュリティ、データマイニング、人工知能など） における優れた実績といった、フィンテック・イノベーションのための土壌 が整っています。フィンテック業界では、ベンチャーキャピタルからの資金 提供を受けて活気あるスタートアップ企業文化が育まれ、経済が活性化す るという好循環が生まれています。現在イスラエルでは、シティグループ、 バークレイズ、 HSBC 、 JP モルガン、損保ジャパン、マスターカードなど、 イスラエルで研究開発を行うグローバルな金融機関のほかに、700社以上 のフィンテック企業が活動しています。現地のベンチャーキャピタル業界に は、 Moneta 、 Viola Fintech 、 Team 8 Fintech 、 FinTLV など、フィンテッ クに特化したベンチャーキャピタル企業が複数存在します。また、 Payonee r 、 Next 、 eToro 、 Melio 、 Amdocs 、 Pagaya 、 NICE 、 Traiana 、 BlueVine 、 Lemonade 、 Tipalti など、近年多くのユニコーン企業も誕生しています。  こういった有望なエコシステム環境があるのだから、イスラエルの消費者 は、日常生活にも金融イノベーションを積極的に取り入れているだろうと 想像するかもしれません。ところが、意外なことにそうではありません。時 代遅れの金融規制制度と一部の規制当局による保守的な考え方がイノベ ーションを阻んでいるからです。概してそのような場合には、自由闊達な競 争よりも、従来の安定した金融制度が優先されがちです。しかし近年、 EU 改正・決済サービス指令（ PSD 2）による金融決済サービス規制の施行に 伴い、オープンバンキングや高度な決済システムが導入されるなど、事態 は好転し始めました。 イスラエルのフィンテック産業の中心拠点（ハブ）は、イスラエル・フィンテ ック・センターです。イスラエル・フィンテック・センターは NGO として10年 前に設立され、フィンテック企業、金融機関、規制当局、投資家、コンサル タント、学術機関、業界団体など、さまざまなステークホルダーが集まる場 になっています。日本の一般社団法人 Fintech 協会をはじめ、世界のフィン テック・ハブと幅広いネットワークを構築しています。また、イスラエルのフ ィンテック企業数社が、東京金融賞の最優秀賞を受賞しました。  2021年11月より、イスラエル・フィンテック・センターは、イスラエル銀行、 イスラエル証券庁、財務省、経済産業省、イスラエル・イノベーション・オー ソリティ、デジタル・イスラエル・イニシアチブといった複数の政府機関や金 融規制当局による共同事業である Fintech . IL Innovation Community の管理者にもなっています。 Fintech . IL の主な目的は、イスラエルの金融 および公共セクターにおけるイノベーションを促進し、関連するスタートア ップ企業を支援することです。 イスラエル・フィンテック・センター代表、シュムエル・ベン・トヴィム ： www . fintech - israel . org 51